日銀は10日発表の7月の地域経済報告(さくらリポート)で、全9地域のうち関東甲信越や近畿など5地域の景気判断を前回4月の報告から引き上げた。残る4地域は据え置いた。海外経済の緩やかな成長に伴う輸出増や労働需給の引き締まり、消費の底堅さが増していることなどを背景に、景気改善が広がりをみせている。
各地域の景気の総括判断では、北陸と東海で「緩やかに拡大している」、中国で「緩やかに拡大しつつある」、関東甲信越で「緩やかな拡大に転じつつある」とした。景気判断で「拡大」という表現を使う地域は6地域となり、2005年4月のさくらリポート公表開始以来最多だった。
海外向けの電子部品関連の生産増や、個人消費での耐久消費財などの堅調な販売、16年度補正予算関連の公共工事の本格化が地域経済の活性化につながっているという。
項目別の状況では、個人消費で関東甲信越、近畿など4地域の判断を引き上げた。消費者の節約志向は根強いものの、11年3月までに導入された家電エコポイント制度を活用して購入した白物家電などの耐久消費財の買い替え需要などが高まっているという。訪日外国人客のインバウンド需要も消費増に寄与した。
一方で地域経済調査課によると「運送会社などで人手不足による賃金引き上げ分を運賃に転嫁する動きもあるものの、全体的に値上げの動きは盛り上がっていない」という。住宅投資は供給過剰感の強い貸家などの着工の伸びが鈍化したこともあり東海など4地域の判断を引き下げた。
生産では関東甲信越など5地域で判断を引き上げた。海外向けに電子部品のほか半導体製造装置や建設機械の生産が拡大している。設備投資は九州・沖縄の1地域の判断を前回よりも引き上げた。「人手不足を背景とした省人化投資などは進んでいる」(日銀地域経済調査課)もようだ。
日銀によると今回のさくらリポートには九州北部を襲った7月上旬の豪雨災害の影響は反映されていないという。
日銀は各地域の経済情勢を分析して3カ月後に報告書を公表している。各地域の判断は以下の通り(↑は上昇修正、↓は下方修正、→は据え置き、カッコ内は前回の判断)。
▽北海道【↑】回復している
(緩やかに回復している)
▽東北【→】緩やかな回復基調を続けている
(緩やかな回復基調を続けている)
▽北陸【→】緩やかに拡大している
(緩やかに拡大している)
▽関東甲信越【↑】緩やかな拡大に転じつつある
(緩やかな回復基調を続けている)
▽東海【→】緩やかに拡大している
(緩やかに拡大している)
▽近畿【↑】緩やかな拡大基調にある
(緩やかに回復している)
▽中国【↑】緩やかに拡大しつつある
(緩やかに回復している)
▽四国【→】緩やかな回復を続けている
(緩やかな回復を続けている)
▽九州・沖縄【↑】地域や業種によってばらつきがみられるものの、緩やかに拡大している
(緩やかに回復している)
〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL10HNK_Q7A710C1000000/